ホームページ開設にあたって

財団法人佐々木研究所/橋本嘉幸


 世の中の事象には流行がある。流行はその時々の社会のニーズによって生まれるものであるが、その言葉のごとく一時的なものであることが多い。科学の世界においても然りである。癌の免疫療法は1960年以来の基礎研究を母体にして細菌製剤や多糖類が癌患者の免疫を高めるという根拠で国外、国内で広く癌治療に用いられ、またLAK細胞などの臨床応用も検討されたが、いずれも前臨床(動物実験)でみられたような効果は認められず、やがて衰微するに至ったのは衆知のところである。その理由は癌免疫の分子生物学的な基盤、特に臨床における基盤が不十分であったことによるものと考えられる。

 最近になり癌免疫療法が再認識されてきた。その背景には、1)抗原認識機構の分子・遺伝子学的な解明が進み、それに即応しての癌抗原ペプチドの存在と宿主免疫応答との関連が明らかにされたこと、ならびに2)既存の癌化学療法には副作用や延命効果など、いくつかの問題が浮かび上がってきたことなどがある。

 基盤的癌免疫研究会(SFCI)はホームページの目的、概要にもあるとおり、癌免疫の基盤的な検討を行うことにより、しっかりした科学的根拠に基づいた癌免疫療法を樹立する目的をもって1996年に設立された。爾来、基礎免疫研究者および臨床家の会員による活発な活動が行われ、会員数も500名に達している。この間、癌免疫療法の主体となる癌抗原ペプチドおよび抗癌抗体の臨床適応に関する検討小委員会を設置し、ガイドライン作成などを含めて、これらの免疫療法の適格な臨床応用について検討している。

 現在のIT革命の時代にあって、インターネットによる研究会の情報の発信は研究会会員のみならず、癌免疫療法に関心を持つ研究者その他の人々にとって非常に有益であり、またインターネットによる国内外からの情報や意見聴取も研究推進に貢献する。そこでSFCIではこの目的達成のためにホームページを設定することとなった。このホームページの活用によりSFCIの活動が一層活性化され、基礎的癌免疫研究が進捗すると共に、有効な癌免疫療法が開発されることが期待される。