第4回SFCI総会に参加して

協和発酵工業株式会社東京研究所  設楽研也


 今回初めてSFCI総会に参加させて頂きました。本総会の一般講演は、口演発表4分、討論2分、スライド5枚以内と、従来の学会にはないコンパクトなものでした。いろいろご意見はあろうかと思いますが、限られた時間の中で、それぞれの先生のご研究の成果のエッセンスを効率よく吸収させて頂くことができました。口演とポスターの準備はやや大変ですが、詳細なディスカッションはポスター発表でできますので、大変よい試みであったと思っております。ただし、ポスターは2日間展示されていましたが、ポスターでの討論を活発にするためには、発表者が必ずいる討論時間を指定頂いた方がよかったのではないかと思います。

 筆者の専門分野は、抗体による癌治療ですが、腫瘍免疫の権威であるGoldenberg先生のシンポジウムは大変興味深く拝聴させて頂きました。先生は癌免疫療法の最近の進歩についてご講演されましたが、ここ数年すっかり定着した癌抗体医薬についても1980年代に開始された最初の臨床試験から20年程度経過しており、新しいアプローチが実を結ぶまでには、多くの努力と試行錯誤が必要であることを痛感いたしました。最初に開発されたマウスモノクローナル抗体は、ヒトでの抗原性から中和抗体が誘導され、血中半減期が激減し充分な効果が得られないことが最大の課題でしたが、キメラ抗体、ヒト化抗体が開発され、抗原性の欠点が克服されたことで今日に到っております。臨床試験のフィードバックの重要性を示すまさに典型例であると思います。今後は、臨床効果を示した抗体のメカニズム研究により、さらに効率的に癌治療抗体の開発が進むものと期待しています。

 本総会の発表のレベル、質の高さには驚きました。第4回大会のスローガンである「基盤研究から臨床への応用」を目指す意気込みが充分感じられた総会であったと思います。本総会の最大のトピックスは、日本国内で実施されているペプチド癌ワクチンの第I相臨床試験の現状と課題が紹介され、討論されたことであると思います。国内でのオリジナリティーのある基盤研究の成果を、いち早く国内の臨床試験に結びつけられて、臨床試験プロトコール、安全性、免疫学的指標について議論されました。免疫モニタリング法については、CTL誘導、DTH反応、サイトカイン産生などが議論されていましたが、臨床効果とどの指標が相関するかは結論が出ておらずで、有効例が出てからの解析が重要になるとのことでした。新しいアプローチであるがために、臨床試験で次々に課題が出てくるものと思いますが、臨床試験をとうして得られた貴重な知見を基盤研究にフィードバックしてステップアップしていくことが重要であると思います。近い将来、有望な癌治療法となることを期待したいと思います。