第4回SFCI総会に参加して

愛知県がんセンター研究所腫瘍免疫学 赤塚美樹


 第4回SFCIは、私がフレッドハッチンソン癌研究所での留学を終えて初めて参加した国内での学会であると同時に、血液の医者を志して14年目にして初めて参加する免疫学系の学会でありました。5年前に渡米するまで、同種骨髄移植で多数の患者を治療しながら、骨髄移植とは免疫療法に他ならないと感じておりました。しかし、臨床で遭遇するそうした腫瘍免疫現象を、真に科学の眼で解析し討議しようと試みたSFCI研究のような学会は当時まだ無く、ドナーのリンパ球輸注を「免疫療法」と称して漫然と行っていたように思います。ところが1999年よりPhil Greenbergのラボに移籍し、T細胞輸注療法の最前線で働く機械を得て、免疫療法はすでに臨床で科学として確固たる地位を獲得しつつあると再認識し、免疫療法の将来は非常に明るいと感じました。その興奮冷めやらぬ中で参加したのが第4回SFCIあったわけで、私が日本国内での免疫療法の目まぐるしい発展に感動したのは言うまでもありません。あまりに多岐な分野にわたる優れた発表がなされ、どれかを取り上げて感想を述べるのは甚だ困難に感じます。ただ私が研究をしているマイナー抗原は文字どおりマイナーな分野であることがよく分かりました。しかし、組織特異性が強く、ドナーと患者間で比較的不適合が起こりやすいマイナー抗原型が今後多数見つかってくれば、腫瘍抗原に準ずる抗原として少なくとも血液腫瘍の分野では有力なものになると信じております。

 さて、免疫療法を医学の一分野として今後とも存続・発展させるためには、会長の今井浩三先生の総括にもあったように、治療効果の客観的な判定方法の確立や免疫療法を支援するサイトカイン等の使用上のガイドライン作成が重要になってくると思われます。留学中、テトラマーを作成し抗原特異的CTL輸注療法後の追跡を行ってきましたが、感度や機能の解析上で問題点が残り、単独の方法では不充分と思われました。一般に高親和性TCRをもつT細胞の反応を得ることが抗原免疫上重要ですが、種々のアッセイ系で非生理的な高濃度のペプチドでパルスした刺激細胞を用いても、高親和性T細胞の反応を評価しうるかといった検討がさらに必要と感じました。またGreenbergラボ主導のメラノーマの臨床治験で、1つの腫瘍抗原だけに特異的なCTLが輸注された症例のなかで、その抗原陰性variantが増殖してくる症例が存在しました。同様に、ペプチド療法前後で、抗原陰性のvariantがどの程度で出現するかなどは大変興味深い研究になると思います。最後に、使用されたサイトカイン等が医薬品でない場合も散見されましたが、今後とも広く世間で認められる研究を続けるためには、少なくとも学会レベルでの早急なガイドラインの作成が不可欠と感じました。そうすることによって私たちも安心して研究に利用し、また患者さんへの説明もできるようになると思われます。