「本邦における癌ワクチン療法の臨床導入に向けて:1999年」
癌ペプチドワクチン臨床試験の推進に向けて:何を目指すのか?

三重大学医学部第二内科 珠玖 洋


 昨年に引き続いてのペプチド療法を中心とした癌ワクチン療法に関するパネルディスカッションが行われた。我が国でも既に幾つかの施設においてMAGE3あるいは、CEA等を標的とした癌ペプチドワクチンが進行しつつあり、ペプチドワクチンの新しい幕開けが始まりつつある。学術的な立場で癌の患者さんを対象として臨床第I相試験を行うために、プロトコールの内容につき考慮すべき事柄、そして取るべき手筈等につき、下山先生及び山名先生に発表して頂くことが出来た。実際には、臨床試験を行う為には各施設の努力目標を越えてしまう日本全体の環境整備がペプチドワクチンを含め、遺伝子治療、その他新しい癌の治療法の早期臨床試験を進行させて行く上でも極めて重要であることが再認識された。  一方学術的には、様々な抗原ペプチドを目標とした癌のワクチンの臨床試験を進行させる中で、いかにしてその効果を評価していくかということが大きな問題となってくる。とりわけ、特定の抗原ペプチドに対する免疫増強を目指しているペプチドワクチンにおいて、それらに対するT細胞免疫応答をいかに簡便に、そして信頼性高く評価出来るか、そのためにいかなるアッセイシステムを使うかということが今後大きな課題となる。定永先生及び角田先生には各々の施設での臨床試験の経験も踏まえて、今後重要になるべきペプチドワクチンに際してのimmunomonitoringに関して、CTL assay、ELISpot assay、あるいは今後我が国でも使われるであろうペプチドMHC分子の複合体のtetramer等の利用の可能性についてもお話願い、今後の問題提起をして頂いた。